平成12年霜月(11月)22日

 昨日、高千穂遙と鹿野司が来て、こんど徳間書店から出た『教養』という本の打ち上げと販売促進のための作戦会議をした。なんて大げさな事は口実で、久しぶりに「ご苦労さん」と酒を飲んだのだ。 タケはあいかわらず「大きな声」だが、ぎっくり腰だかで、見かけによらず「ヤワ」な身体のようだ。チュカサはいつものように「クール」な態度と口振りだが、今回いっしょに仕事をして意外にナーバスだということが解って、面白かった。そのあと、南山宏に第一回SFコンテストの頃の話を聞いた。「地には平和を」についての「秘話」や、福島正実さんのことなど、興味深い話がたくさん聞けた。「小松左京マガジン」創刊号に載せるので、お楽しみに。

平成12年霜月(11月)20日

 15日にSF新人賞の選考会をした。今回は最終選考に残った6人のうち三人が32歳で、あとの三人が20代。受賞した「ペロー・ザ・キャット全仕事」を書いた吉川良太郎さんは24歳、「ドッグファイト」の谷口裕貴さんは29歳。若いパワーを感じました。
 しかし、どれも「バトル」の描写はすごくうまいんだが、「家族」とか「友人」とか人間関係の描写がほとんどなかったのが不思議だった。

 平成12年しもつき(11月)6日

 2日に東浩紀君とあう。29歳の文芸評論家だ。私と40歳も離れているが、彼の書いた本(「郵便的不安たち」「評論的・郵便的」)を読むと、しっかりしていて、私が大学時代に振り回していた哲学用語がちらちらとでてきてなつかしい。しかし、私がフォローできるのは現象学もフッサール、ハイデッガー、サルトルまでで、メルロー・ポンティなどは解らない。東君は、東京大学で哲学を学び、フランスのデジルを卒論に選んでいる、文学博士だ。どうやら小学生低学年で、私の小説を読み、「総合的知性」に対する憧れで哲学を志したとのこと。気の毒なことをしたなぁ。しかし、現在の日本のアカデミズムは、「総合的知性」を育てる方向には行っていないらしい。だいぶ絶望的な気持になっているようだが、そんなこたぁ知らないよ。私の責任ではないもの。
 でも、久しぶりに「若い知性」に接して、すごく楽しかった。私の単語はみんな彼は理解してくれるし、現在にいたる哲学的流れも説明してくれる。すばらしい。うれしい。あんまりうれしくて12時まで飲みかつ語り、翌日はダウンして佐治敬三さん一周忌の会はパスしてしまった。佐治さんごめんなさい。


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